【卒業文集】Dancer in the Glare2017/03/01

高校吹奏楽部では毎年夏に定期演奏会があった。

トランペットだった私も、大舞台でときどきソロ演奏をした。

ステージの真ん中に出てきて、トランペットを構える。

スポットライトがバッと当てられる。

みんなの演奏をバックに、自分だけの楽譜を吹く。

想像してもらうと、ものすごく緊張するけれど、ものすごく興奮する場面だと思う。



でも気が付いたことがあった。

眩しすぎるライトが当てられると、実は周りが見えなくなるのだ。

周りには大勢の人がいるはずだし、みんなの演奏も聞こえるのに、周りが全然気にならない。

強烈な光の下で、自分は一人、自分の演奏に無我夢中になっていた。





理科の先生になろうと思ったきっかけは、「光」の不思議さだった。

「真っ暗だから見えない」というのは分かる。でもどうして「明るくて見えない」のか。

考えても分からない。高校物理では説明できない。

実は生物学の知識も必要だと気付いたのは大学に入ってからだった。

大学に入ると分からないことだらけだと気付かされた。

ガスクロという実験装置から離れられず何日も研究室の床で寝る生活に嫌気がさした日もあれば、相対性理論を理解できて舞い上がった日もあった。

がむしゃらにもがいた日々だった。

たまの休日には映画を観ながら寝落ちしていた。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」という映画に出会ったのも、大学4年の夏だったと思う。

光と闇はいつも私のテーマだった。





今の自分に強烈なスポットライトを当てよ。

周りなんて気にしないで、自分の人生に光を当てよ。

自分の思い込みにすぎない過去なんてどうでもいい。

トラウマなんて存在しない。

自分の勝手な妄想にすぎない未来なんてどうでもいい。

占いなんて当てにならない。

ただ立ち止まっていては行けない。

歩き出すのが怖いなら、走り出すのが辛いなら、踊ればいい。

いま、ここで、全力のダンスを踊ればいい。

どこに行くかなんて気にしない。目的地なんて決めない。

今の一歩に全力を尽くし、次の一歩に集中する。





私はこの年になってアドラー心理学に出会った。

スティーブ・ジョブズの卒業式スピーチを聞いたのは数年前だ。

あなた方は私より若い。

今をがむしゃらに生きればそれでいい。

後先考えず、なりふり構わず、いま、ここを、全力で踊れ。

まぶしすぎる光の中で踊れ。

卒業おめでとう。みなさんが光とともにあることをご祈念申し上げます。



(野球部のみんな、楽しい野球をありがとう。)

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