「理科の実験が一番楽しい」2013/07/22

夏休みが始まりました。通知表を渡して、家でどんなふうに言われたでしょうか。

生徒の一人に、いわゆるグレーゾーンの子がいます。その生徒の話題を聞かない日はありませんし,会議でも毎回のように議題に上がっています。

(守秘義務がありますから,これ以上のことは書きません。)



夏休み初日,部活帰りの彼に声をかけて昇降口に座って話しました。

「通知表もらってどうだった?」
「はい・・・よかったです。」

「学校はたのしい?」
「はい,たのしいです。」

「何が一番たのしい?」
「理科です。」

「お世辞じゃないの?」
「理科の実験が一番たのしいです。」

そこまで聞いて,わたしはハッとしました。



彼にとっては友達よりも,給食よりも,体育よりも,理科の実験が楽しいのです。

コミュニケーションスキルが低いためになかなか心を通わせる友達ができません。

友達とおしゃべりできれば給食もきっとたのしいはずなのにそうなっていない。

勉強はもちろん,運動も苦手だから体を動かす体育も嫌です。

その中で彼がさいごの砦として,さいごの望みの綱として選んだのが「理科の実験」です。

座って見ているだけでも,目の前で不思議なことが起こる。自分で手を加えると何か変化が起こる。分からないかもしれない,できないかもしれない,でもそれでも楽しいと思える。感じることができる。

それが彼にとっての「理科の実験」なのでしょう。



自分の教科をそういう風に捉えたことはありませんでした。

5教科の選択教科で理科が選ぶのは,勉強したくない生徒。「だって実験してればいいんだもん。」

自分の教科にプライドがないわけではありません。「理科って面白いね」と言って変わっていくヤンチャな生徒もいました。



今回は,自分の教科の新たな側面,新たな価値を見出したように思いました。

ヤンチャな生徒の受け皿となるだけではない,グレーゾーンの子をすくってあげられるかもしれない教科なんだということです。(この場合のすくうは,「救う」だけでなく,こぼれ落ちるのを「掬う」でもあります。)

彼のために,わたしももっと魅力的な授業を展開していこうと決意を新たにしました。
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